2018年9月号『甘草について』
甘草について
- 甘草とは
甘草はショ糖の50倍の甘さをもつ植物で、甘味料として食品・化粧品・入浴剤などに幅広く配合されている身近な植物であり、200処方を超える漢方薬のおよそ7割に配合されています。こむら返りで『芍薬甘草湯』を飲んだことがあるという方も多いのではないでしょうか。
甘草は、体内の副腎皮質ホルモンを利用して作用を示します。甘草の主成分であるグリチルリチンは、腸内細菌によりグリチルレチン酸に変化します。グリチルレチン酸は、副腎皮質ホルモンであるコルチゾールの働きを長引かせることで、副腎皮質ホルモンの抗炎症作用や、水を体内に貯留させる保水作用をより強力に発揮させます。
- 偽アルドステロン症にご注意を!
甘草は長期の服用により偽アルドステロン症を発症させる可能性が高いと言われています。
偽アルドステロン症とは、四肢脱力、筋力低下、歩行・起立困難、低カリウム血症(血清カリウム値が3.5 mEq/L以下)、血圧上昇、浮腫、体重増加、筋肉痛、全身倦怠、口渇、多尿、食欲不振、不整脈、動悸、悪心・嘔吐などです。
漢方に含まれる甘草の一日用量は1~8 gに相当します。通常、単独で常用量を使用する場合は、偽アルドステロン症の発現は少ないですが、甘草の一日用量が2.5 gを超える漢方や、甘草含有の複数の漢方を併用する場合、あるいは利尿薬と併用する場合は特に注意が必要です。血清カリウム値や血圧などに十分留意し、異常が認められた場合はただちに服用を中止すべきこともありますので、ご相談ください。