2021年10月号 秋の夜長に夢のお話
秋の夜長に夢のお話
今年6月に、寝つきをよくする薬「ルネスタ」の後発品(ジェネリック薬品)「エスゾピクロン」が発売になりました。
薬の値段が安くなるのは良いのですが、なんだか呼びにくい名前ですね。
ひと昔前、薬の名前は製薬会社が独自につけていましたが、紛らわしい名前による薬の間違いを防ぐために一定の基準ができ、現在では成分名「メーカー」に統一されています。今回は睡眠導入剤の名前の意味・由来を調べてみました。
それでは先発品の「ルネスタ」の名前の由来は何でしょう?
月を表すLuna(ルナ)とStar(スター)を組み合わせた造語で「夜空を眺めるよりもぐっすり眠る」薬を意味するそうです。ちょっとロマンチック?
では似ている名前の「ゾピクロン」の先発品「アモバン」の由来は何でしょう?
「あぁ、もう晩だから寝よう」が由来なのだそうです。笑えますね!!
「マイスリー」というお薬の由来は「My Sleep(マイスリープ・私の眠り)」
「レンドルミン」は眠りにつくことを意味するフランス語「l’ endormir」
「ロゼレム」は「rose+レム睡眠(バラ色の眠り)」おしゃれですね。
昔からなかなか眠れずに悩む人が多く、お薬に期待する気持ちが名前に表れているような気がします。
最後に昔からよく使われていた「ハルシオン」の名前について・・・
ハルシオンは風と波を静め、穏やかな海にする不思議な力を持つ古代ギリシャの伝説の鳥、Halcyon に由来しています。
海上で不慮の死で夫を失った風の神アイオロスの娘ハルキュオネーは、その悲しみのあまり何度も自分も海へ身を投げようとします。
これを見たヘーラー(ゼウスの妻・最高位の女神)は哀れに思い、2人を鳥の姿に変えて、いつまでも離れず、大空を羽ばたけるようにしてあげました。
カワセミは英語でhalcyon birdといいますが、このハルキュオネーの逸話からそう呼ばれるようになりました。
カワセミは毎年冬至の時期に海上に巣を作り、風波を鎮めて、卵を返します。古来よりカワセミが海を鎮めると信じられ
ており、冬至の前後14日間をhalcyon daysと呼ぶようにもなりました。
カワセミが波風を鎮めるということについては、ハルキュオネーの父親は風の神でしたから、娘の不憫さを思い、せめて孫たちだけでも風から守ろうとしてくれているのだとも考えられるようになりました。
その結果、まるで風を鎮めるように心を鎮め、静かな眠りに導いてくれる睡眠導入剤のトリアゾラムにHalcion、つまりハルシオンという名前が付けられたのです。
少しは眠くなりましたか?