2022年10月号ウイルスの力を治療へ
ウイルス療法の機序
ウイルスの自分の遺伝子を宿主の細胞まで「運ぶ力」と、宿主の細胞の中で次々と「増殖する力」を利用して、病気を治すのがウイルス療法です。
ウイルスの遺伝情報を操作して、正常細胞では増えず、癌細胞だけで増殖するウイルスに作り替えます。そのウイルスを癌細胞に感染させ、ウイルスが増殖することで癌細胞を破壊し、増えたウイルスが周りの癌細胞に感染し、ウイルスが増殖することで癌細胞を破壊し・・・を繰り返して腫瘍を縮小します。
保険適応のあるウイルス療法薬
脳腫瘍の一種である悪性神経膠腫の治療薬デリタクト(注射薬)が、昨年11月に発売されました。まだ、デリタクト治療が可能な病院は限られています。
その他のウイルスの力を使った医療
ウイルス療法は、皮膚癌・前立腺癌などで治験が行われており、他の癌への効果も期待されています。
ウイルスの運ぶ力を利用した脊髄性筋萎縮症(運動神経の遺伝子の変化が原因で筋肉が弱っていく難病)の遺伝子治療薬ゾルゲンスマは、2歳未満の患者さんに使われ、多くの場合に治療の効果が現れています。
∻∻∻∻ウイルス感染で、発熱・嘔吐・発疹などの症状が出たり、場合によっては命を奪われることもあります。そんなウイルスの力を病気を治す力に変えてしまうって凄いですね!ウイルスの力を使った医療に大いに期待します。∻∻∻∻